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KUINS ニュース 32

目次

KUINS news 32 [1999.12.15]

表紙写真: UCLA との遠隔講義はじまる

•UCLA との遠隔講義はじまる

八木啓介 (総合情報メディアセンター)

1 はじめに
本学総合情報メディアセンターと UCLA を相互に結んで行う TIDE (Trans-pacific Interactive Distance Education) プロジェクトの遠隔講義が,本年 10 月から開始されました. 本稿では,図1 に示すこの遠隔講義の構成要素 5 つについて順に述べていきます.

講義内容
映像取得 教材提示
映像伝送
ネットワーク

図1: TIDE プロジェクトの遠隔講義を構成する 5 要素の階層構造.

今回は,「インターネット社会におけるセキュリティ問題と対策」をテーマとし, 本学全構成員を対象にインターネットセキュリティについて,学内における対策への意識を推進するために 開催されたものです.

2 ネットワーク
本学と UCLA の講義室間は, GEMnet [1], CalREN-2 [2], Abilene [3] といった複数のネットワークを経由して 相互に接続されています. これらのうち GEMnet は,NTT が遠隔会議などのテストベッドとして運用している イントラ ATM ネットワークです. TIDE プロジェクトでは,総合情報メディアセンターと NTT の共同研究の一環として このネットワークを利用しています. GEMnet は本学が接続されている NTT コンピュータサイエンス研究所のほか, 米国 Cupertino の NTT アメリカにまで接続されています. TIDE プロジェクトでは,講義の時間にあわせて GEMnet 上に帯域 5Mbps の双方向 PVC(Permanent Virtual Channel) を予約し, 本学 -- Cupertino 間の サービス品質を確保しています.

CalREN-2 と Abilene はそれぞれ Internet2 を構成するネットワークのひとつで, CalREN-2 は Northern Ring・Southern Ring と呼ばれるふたつのループ型ネットワークからなります. これらのループ型ネットワークは Abilene によって接続され, UCLA は CalREN-2 Southern Ring に属しています. TIDE では UCLA が,Cupertino とその最寄りの CalREN-2 Northern Ring ノードである UCB との間を DS3 で接続し,CalREN-2・Abilene に静的な経路を設定することによって Cupertino -- UCLA 間の到達性を確保しています

またTIDE プロジェクトでは,UCB -- UCLA 間が IP 接続であるのにあわせて GEMnet を IP over ATM によって利用し, すべての通信を IP によって行っています. また TIDE プロジェクトのパケットが必ず GEMnet・CalREN-2・Abilene のみ を通り,コモディティトラフィックが流れる通常の Internet を経由しないようにするため,経路上のすべてのルータには UCLA のアドレスが割り当てられています.

図2: TIDE プロジェクトのネットワーク構成.

3 映像伝送
2章で述べたように,本学 -- UCLA 間の通信はすべて IP 上で行われています. このため TIDE プロジェクトでは,映像を MPEG2 形式に圧縮して UDP/IP 上で伝送する, NTT エレクトロニクス製 Reimay Box コーデックを採用しています. このコーデックは Windows NT のラックマウント PC をベースに, MPEG2 エンコーダ・デコーダと 制御ソフトウエアを実装したものです. ネットワークインターフェースには 10/100Base-TX を 1 ポート備え, 一定の設定で使用する場合には電源投入以外の操作を必要としません. 設定変更はモニタやキーボードを接続して GUI から行えるほか, シリアル接続端末からのコマンド入力によっても行うことができます.

4 映像取得
TIDE プロジェクトでは, 講義を自動的にアーカイブ化する研究 [4] のひとつとして, 複数のカメラを自動的に切り替えて最適な映像を取得するシステム [5] を導入しています. この映像取得システムは,複数の観測カメラと撮影カメラからなります. 観測カメラは講師が移動する可能性がある 範囲全体を異なる角度から撮影し, 映像のフレーム間差分とカメラの位置をもとに講師の位置を三角測量します. 撮影カメラは,観測カメラによる測定結果に基づき, 最適な位置・角度から講師を撮影します.

5 教材提示
2章で述べたように,本学 -- UCLA 間の帯域は 5Mbps です.また Reimay Box が映像品質と遅延の観点から圧縮率 3Mbps で使用されるため, 本学 -- UCLA 間で伝送できる映像は, それぞれ講師あるいは学生の映像いずれかひとつに限られます. そこで TIDE では教材が本学と UCLA で同期して提示されるよう, IMED・MeetingPerfe といったグループウエアを利用しています. IMED は,UCLA CDI が開発した WWW ベースの教育用システムであり, 教材提示の他に教材作成ツールや講義評価ツール, オンラインでのオフィスアワーを実現する機能をもっています[6]. MeetingPerfe は, 会議を想定した NTT アドバンストテクノロジ製のグループウエアで, 教材提示を同期させられるほか マウス操作やウインドウのスクロールを同期させてポインティングを行うこともできます. また MeetingPerfe では, HTML ファイルのほかに PowerPoint ファイルを教材に用いることができます.

6 講義内容
TIDE では,宇宙物理と物理学入門の講義を行っています. 宇宙物理は本学の講義形式をとり,週 1 回の講義を半期にわたって行います. 物理学入門は UCLA の講義形式で,週 2 回の講義を四半期にわたって行います. 物理学入門が UCLA からの単独講義であるのに対し, 宇宙物理は本学と UCLA で交互に講義を行うリレー講義になっています. 両講義とも本学・UCLA それぞれ 20 名ないし 30 名の学生が受講しています. 講義内容が予備知識をあまり仮定していないため, 文科系学部に所属する学生が過半数を占めています. また時差のため講義は,本学側の早朝,UCLA 側の夕方から夜間にかけて行われています.

図3: 講義風景.

7 おわりに
本稿では,本学総合情報メディアセンターと UCLA Center for Digital Innovation が共同して行っている海外遠隔講義プロジェクトについて 報告しました. この遠隔講義の中で現在問題となっているのは, ネットワークのデータ到着間隔の乱れ(ジッタ)による映像のノイズと 音響エコーです. 今後は,音響エコーを安定して抑制することができる AV 機器システムの設計手順の定式化や, ジッタを抑制するネットワーク技術について検討していく予定です.

参考文献
1.http://www-grd.rdh.ecl.ntt.co.jp/GEMnet/ 2.http://www.cenic.org/calren2.html 3.http://www.ucaid.edu/Abilene/ 4.美濃導彦他: 講義の自動アーカイビングシステムの構築,第58回情処全大,4U-01,1999. 5.亀田能成他: 講師追跡によるカメラ映像の自動切り替え,第58回情処全大,2V-04,1999. 6.http://www.cdi.ucla.edu/

バックボーンATMネットワーク接続装置導入に伴うルータ構成変更の報告

KUINS ニュース No. 30 でお知らせしたバックボーンATMネットワーク接続装置の新ルータが, エッジルータについては7月末に,サテライトルータについては9月末に, それぞれ本格運用を開始しました. これに伴い, 従来 KUINS-I 基幹ループ LAN に接続されていた Ethernet サブLANは全て†, KUINS-II/ATM を主たる対外経路とし, KUINS-I 基幹ループLANはバックアップのみに用いる体制に移行しました. これで KUINS 全体が KUINS-II/ATM の高速バックボーンをフルに活用することになり, KUINS-I 基幹ループ LAN の 混雑の問題が解消されると共に, KUINS-I と KUINS-II が互いにバックアップすることで様々な障害において その影響を最小範囲に留めることが可能となりました.

† KUINS-II/ATM が配備されていない宇治地区化学研究所極低温物性化学実験室を除く
さらに,No. 31「エッジルータ・サテライトルータのポート使用申請について」 でお知らせしたように, 既存のサブ LAN を複数のサブ LAN に分割したり, サブ LAN を新設したりすることも, ポートに空きのある限り可能となっています.
なお,AppleTalk のルーティングに関しては従前通り KUINS-I のみを介して行っています. 従来工学部関係を中心に行われていた NetWare のルーティングは本年7月末を以って停止しました.

ネットワーク構成変更作業に伴う不時停止に関するお詫び

学術情報ネットワーク機構事務室情報システム管理掛

本年7月以降にエッジルータ・サテライトルータ切り替え作業を行って参りましたが, 切り替え時に 通信が停止するという事態が連続的に発生し, 利用者の皆様には,大変ご迷惑をおかけいたしました. ここにお詫びいたします.
今後ともネットワークの異常停止が無いように努力してまいります.

WCN 線を増速

KUINS ニュース No.26 でお知らせしましたように,1998年4月より KUINS の新たなインターネット対外接続先として, WCN (http://www.omp.ad.jp) が加わっています.この回線は主として商用系の組織との間の通信 (電子メールのやりとりや WWW のページの閲覧等) に利用されています.

この接続回線の当初の通信速度は 1.5Mbps でしたが, 最近の通信量の増大に伴い昼夜を問わず飽和状態となり, しばらく快適な通信ができない状況が続いていました. この状況を改善するため,1999年11月1日より回線速度が 4.5Mbps に増速されました.

KUINS会議日誌

平成11年10月1日~平成11年12月14日

学術情報システム整備委員会技術専門委員会
平成11年10月6日(第47回)
・委員の交代について
・KUINSの将来計画について
平成11年10月19日(回議)
・委員の交代について

学術情報システム整備委員会学術情報専門委員会
平成11年10月7日
・副委員長の選出について
・情報倫理について

KUINSネットグループ連絡会議
平成11年10月14日(第85回)
・パソコンの移管替えについて
・接続端末数について
・接続状況報告
・KUINS障害報告
・スパムメール対策アンケート(調査)について
平成11年11月18日(第86回)
・接続端末数について
・接続状況報告
・KUINS障害報告
・バックボーン接続装置の利用状況について
・KUINSにかかる必要物品について

お知らせ

KUINSニュースへの寄稿を歓迎します.詳細は kuins-news@kuins.kyoto-u.ac.jp または下記までお問い合わせください.

問い合わせ先
学術情報ネットワーク機構情報システム管理掛 ((075) 753-7841)
(大型計算機センター等ネットワーク掛 ((075) 753-7432))

PDF版 KUINSニュース No.32

 

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