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機構長挨拶

情報環境機構長就任にあたって

情報環境機構 機構長 引原隆士

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本年4月に,図らずも情報環境機構長に就任致しました.就任に当たり,ご挨拶を申しあげます.

情報環境機構は,京都大学の情報基盤を充実し,情報環境の整備により教育・研究を支えるために設立された全学組織です.その設立から発展の経緯については,これまでの機構長のご挨拶,情報環境機構が発行した資料に詳しくまとめられていますので,ここでは割愛します.

さて,京都大学の構成員として認証を受けている人は,また所属が異なっても,キャンパスが異なっていても,ひとたび大学の情報ネットワークに接続すると,ネットワーク上でメール,計算環境,ストレージ,そして各種データベース他の利用など,一律のサービスを受けることができます.その空気,電気,水と同様なインフラと利用環境を構築し管理しているのが,情報環境機構です.大学における教育が適時に実施され,業務が遅滞なく進むためには,対面でなされるリアルな空間における活動と,ネットワークを介したサイバー空間における情報交換が,時間・空間・人による影響を受けずに成立するようにすることが重要となります.この当たり前と思っていたことが COVID-19 の感染拡大により,極めて重要なことだと認識され,その課題が明らかになりました.喫緊に求められている大学のデジタルトランスフォーム (DX) は,モード1と言われる単なる押印をなくすような置き換え技術,あるいは紙の書類の電子ファイル化などではありません.むしろそれができていない現状は,本来やるべきことを進めず新しいことに取りくむことを求めてこなかった組織慣行に由来します.従って,大学はこれを契機とするものの,さらに機能のデジタル化をすすめ,新しい価値を生み出す仕組みを推進するDXモード2の実施が求められます.そのために,何時,どのレベルまでDXを達成するかを,教育,研究の現場に対して明確にしていかなければなりません.情報環境機構はその役目を担っています.

京都大学が2013年に立てたICT基本戦略は,京都大学の情報基盤における,企画・管理・運用から安全で多様なサービスの提供,そして人材の育成を進める考え方を示し,現在のハードウェアとソフトウェアによる環境をその方向性に沿って整えてきました.その準備が,今回のパンデミックの非常時に教育の継続を支えました.一方で,人が定員以上に同じ場所集まることを当たり前とした教室運営や遠隔設備は,公正に見ても役に立ちませんでした.この反省に立ったとき,既存のあり方一辺倒では無く,従来の教育の理念を保って新たなフェーズにDXにより移行できるか,大きな宿題を与えられています.

蟻などの集団で生息する昆虫の社会では,一見何の役割も持っていない個体が,非常時に一定の役割を果たして対応することがあるという話があります.それが社会のレジリエンスでもあると言われています.情報基盤を利用する個人,支える個人が,環境が変わった時に新たな目的を設定し,デバイドを起こさずにネットワークを構築する人材を日頃から意識することが重要です.それがサービスの重要な点であり,横並びでルーチン化して思考停止に陥らない展開が求められます.

一方,世界の科学は,データのエビデンスをこれまで以上に重視し,信頼できるデータを相互に利用することで新しいデータ駆動型の科学の創成を志向する段階に移行が求められています.しかしながら,研究の創生・展開は研究者個人の裁量であり,従来大学がそこに立ち入ることはありませんでした.その結果,急激に進んだICT による研究のライフサイクルと利用者の置かれている環境の変化にまで配慮した将来設計を提示することができていません.この大きな原因は,学術情報を俯瞰的に見ることができない縦割り組織の局所最適化に陥っていたことにあります.世界の動き以上に,いち早く研究現場からデータを利用した学習,研究を進め,その成果のデータを共有し,そして研究成果としてまとめることができるプラットフォームや情報環境を備えることは避けて通れません.しかしながら,公認データ認証サーバを自らが準備し管理することは単独主義に陥る危険があります.これに対して,国の支援を受けたデータプラットフォーム学認RDMが本年稼働を開始しました.本学では図書館機構のリードで研究データのオープン,シェアのあり方を規定するポリシーの策定が学内で完了しました.それを受けてデータ収集から実装フェーズ,すなわちデータ共有に基づくデジタルツインを利用した研究推進,ロボット遠隔実験の実証など,データ駆動によるデータサイエンスが実施可能な環境を早急に構築することになるでしょう.新しい研究・教育環境を構築すべき瀬戸際に我々がいることを理解した上で,学内部局や構成員の声をこれまで以上に聞き,十分理解を得た将来計画の策定を経て具体的な一歩を踏み出す必要があります.これは,将来のための人材育成の環境構築に他なりません.

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図 研究のライフサイクルと研究データのプラットフォーム

情報環境機構は主体的に,学内の安定的な教育・研究基盤の維持と,新しいデータを介したオープンな研究基盤の構築,その相反するものを構築するため,他の全学組織,部局と連携して取り組んでいきたいと思います.

関係者の皆様には,忌憚の無いご意見とご協力をいただければ幸いです。

(2021年6月14日掲載)

 

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