コンテンツ

  1. ホーム
  2. 情報環境機構について
  3. 参考資料
  4. kuins_news
  5. KUINS ニュース 70

KUINS ニュース 70

目次

KUINS news 70 [2010.8.31]

表紙写真:原子炉実験所(左)とiPS細胞研究所(右)

SINET4サービス開始に関するお知らせ

京都大学は, 国立情報学研究所(NII) が運用しています SINET3 を利用して,文部科学省, 他大学や企業などと接続しています.すでに様々なところで案内されておりますが,このたび, SINET3がバージョンアップされ,平成23年4月からSINET4として運用が開始されます. 詳細につきましては,SINET4への移行に関するNIIの案内ページを御覧下さい.

このSINET4への移行により,京都大学ではSINET接続に以下のような変更が生じます.
・京都大学宇治キャンパスに設置されていたノードが廃止
・京都大学に設置されていたSINETノードが京都データセンターに移設 (ただし,当初は現在の接続とそれほどの変化はない)
・平成23年3月5日(土)にネットワーク停止が伴う切替作業を実施

本件に関する情報は,今後ともKUINSホームページやKUINSニュース等で広報していきます.

平成22年度の耐震改修・建物新営等工事予定について

平成22年度の耐震改修工事は,本部北構内の法経済学部北館, および薬学部構内のウイルス研究所本館が改修が予定されています. なお,これ以外の建物に関しては,改修工事要求を出されていても,現段階では実施未定となっています.

建物新営に関しましては,北部構内の物理国際先端研究棟,本部北構内の物質―細胞統合研究棟, 医学部構内の医学部課外活動施設,および,宇治構内の宇治地区先端イノベーション拠点施設が予定されています.

KUINSでは,これらの耐震改修工事に伴う情報環境整備につきまして,施設環境部と協力し, 皆様方が引越しと同時にネットワークが利用できるよう鋭意実施しますので,ご協力をよろしく御願いします.

平成22年度「KUINSの高速化」事業展開について

昨年度本部地区で大規模に実施しました「KUINSの高速化」事業による館内および末端スイッチの更新を, 今年度は桂キャンパスで行います.今回は,桂キャンパスAクラスタ内の館内スイッチ8台 および末端スイッチ69台を更新する予定です.

この更新により情報コンセントの通信速度が100Mbpsから1Gbpsと高速化されるとともに, 老朽化により一部不安定だったスイッチの安定稼働が期待できます.Aクラスタの方々には ご迷惑をおかけすると思いますが,ご協力よろしくお願いします.

上へ戻る

高速無線通信を用いた京大・東大対校ボート競漕大会の手作り実況中継放送

蚊野 浩
京都産業大学 コンピュータ理工学部 教授
京大ボート部OB

前川 覚
京都大学 大学院人間・環境学研究科 教授
京大ボート部OB 京大ボート部部長

中村 陽一
東洋建設株式会社 部長
京大ボート部OB 京大濃青会理事

1. はじめに
京都大学ボート部と東京大学ボート部は,毎年交互に滋賀県瀬田川と埼玉県戸田オリンピックコースで 京都大学・東京大学対校競漕大会を開催している. 今年は6月20日(日)に瀬田川において第61回大会が開催された. レースは自然河川 瀬田川の3,200mコースを,京大と東大の2回生トップクルー2艇で競い合う試合で, 男子エイト,男子フォア,女子クオドルプル,医学部フォア,OBレースが行われる. この伝統ある競漕大会には毎年,両大学総長・副学長,OBをはじめ多くの方々が応援・観戦に来てくださるが, 屈曲した河川であり,橋梁にも遮られて,3,200m,十数分におよぶ熱戦のうち, 観客は目の前を通り過ぎる約300m,1分間程しか見ることができない. このような欠点を補うため,今回,京大ボート部では,スタートからゴールまでレース全体を, 伴走艇(モーターボート)や橋上・川岸等合計6カ所からビデオカメラで撮影し, 最先端高速大容量通信WiMAXと映像通信ソフトを活用して無線送信し,コース中程の大会本部 (京大ボート部合宿所)に設置した大型ディスプレイに実況映像中継を行うと共に, インターネットを通じて全国の部員家族やOB,ボート愛好家へも映像配信を行った.

この映像中継は市販の民生用機器を組み合わせて行ったものであり,機器やパソコン, 通信システム,ソフトの技術的進歩により,個人レベルでもテレビ中継が可能であることを立証した 世界中がワールドカップを観戦しているのと同じ状況を,個人的なライブイベントで実現することが できるようになってきたのである.

この技術はボートやマラソン等の長距離スポーツ大会のみならず,リアルタイムでの遠隔地からの練習指導, また学術面でもフィールド調査における遠隔映像撮影や,実験・実習の遠隔地からの教育指導にも 個人レベルで応用可能と考えられるので,ここでその技術的内容を紹介することにする.

本計画は新しい技術活用として,新聞[1]や京大ホームページ[2]で報道・広報された. また,京大オープンコースウェアOCWに録画映像のダイジェスト版[3]が掲載され, 全映像の録画は京大ボート部ホームページ[4]で見ることができる.

2. 高速大容量無線データ通信技術
インターネット映像配信技術が容易に利用できる環境になってきたが,映像配信には高速で 大容量のデータ通信経路が必要である.インターネットへのアクセス回線としてはFTTH(Fiber To The Home)か ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)を用いることが一般的であるが,有線であるため屋外ライブイベント のインターネット映像中継には,撮影可能な中継地点の選択に大きな制約がある.無線通信としては携帯電話用の 標準的な3G移動通信技術(W-CDMA,CDMA2000)があるが,映像配信用回線としては速度が不十分である.最近, より高速で大容量の無線通信技術としてWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)やHSPA (High Speed Packet Access)のサービスが開始された.これらは,仕様上の上り速度が1Mbpsを優に超えている. この速度は標準ビデオ映像をMPEG4/AVC(H.264)で圧縮伝送したとき,大きな画質劣化なく送ることができる速度である. これら最新の高速大容量無線データ通信技術をインターネット映像配信サービスに適用することで,ライブイベントを, 非常に安価に映像中継することが可能になる.

2010年6月時点でサービスが提供されている高速無線データ通信技術はWiMAXとHSPA (商品名:FOMAハイスピード,EMモバイルブロードバンド)である.これらの最高通信速度を表1に示す.

表1. 高速大容量データ通信技術の比較

サービス名 下り最高速度 上り最高速度
WiMAX 40Mbps 10Mbps
FOMAハイスピード 7.2Mbps 5.7Mbps
EMモバイルブロードバンド 21Mbps 5.8Mbps

今回のボート競技のインターネット映像中継では,この中で通信速度が最も速く, しかもサービス提供会社であるUQコミュニケーションズ株式会社から支援を受けることが可能であったWiMAXを採用した.

図1においてUL:2.0Mbpsなどとあるのは,UQコミュニケーションズ社のWebサイトに記述されている WiMAXアップリンク速度の実測値である.●で示した「●A:国道」~「●E:ゴール」は,設置した5カ所の固定撮影地点であり, 「▼伴走艇」はそれに加えて,スタートからゴールまでレースに伴走したモーターボートからの移動撮影カメラを示す.

3. WiMAX映像中継の概要
第61回京都大学・東京大学対校競漕大会の会場略図を図1に示す.会場はJR東海道線の瀬田川鉄橋下をスタートとする 全長3,200m(2マイル)の自然河川である.大会本部はスタートから下流約1,000mの地点に位置しており, 瀬田唐橋と東海道新幹線橋梁との間,300mのみ生のレースを観戦することができるが,残り90%のレースは見ることができない.

図1. 対校競漕大会の会場と撮影地点および各所でのアップリンク(UL)速度

固定撮影地点と伴走艇の計六カ所に配備する撮影・送信システムは,ビデオカメラ,ノートパソコン, カメラとノートパソコンを接続するビデオキャプチャーおよびWiMAX端末で構成される.撮影・送信システムから WiMAXで送信される映像は,UQコミュニケーションズ株式会社のWiMAX基地局で受信され, さらにインターネットを介して大会本部に設置したノートパソコンによって受信される.受信用ノートパソコンは2台用意し, 2カ所の撮影地点からの映像を同時に受信可能とした.2カ所からの映像をオペレータの判断で一方を選択し, 大会本部の艇庫屋上観覧席に設置した4台の46インチ大型ディスプレイに表示した.4台のディスプレイには同じ映像を表示した. また,この映像をライブ配信用ノートパソコンに取り込み,フリーの配信ソフトウェアであるUstreamを用いて インターネットライブ配信をおこなった.

撮影点から本部受信用パソコンへの映像通信には「Skypeビデオ」を用いた. 「Skypeビデオ」は1対1のテレビ電話機能を提供する無料ソフトウェアである. 映像中継は伴走艇からの映像と「A:国道」からの映像を,2台の受信用パソコンで受ける状態からスタートする. 伴走艇からの映像は全レースコースにわたって接続を維持した.一方,5カ所の固定撮影点からの映像は, レースの進捗に応じて順次切り替えた.伴走艇と固定撮影点の2つの映像から,より映像品質が優れていると判断されるものをスイッチ で選択し,ディスプレイに表示した.

4. WiMAX映像中継システム

4.1 WiMAXのアップリンク速度と実データ転送速度および映像品質
WiMAX基地局に近接し,見通せる地点のアップリンク速度は3.0Mbpsを超える.逆に, アップリンク速度が1.0Mbpsを下回る地点では,電波のフェージングなどの影響もあり, 実際のアップリンク速度は不安定になっているものと想像される.今回の映像中継システムへの応用においては アップリンク速度が高速かつ安定していることが重要であるため,概ね2.0Mbps以上の速度を有する地点を探し, 固定撮影点に設定した.10m程度の移動や2m程度高いところへ移動するだけで,アップリンク速度が大きく変わることもあった.

撮影地点のパソコンから本部のパソコンへの送信に用いた映像通信ソフト「Skypeビデオ」は映像圧縮にOn2社の VP7技術を採用しているとの情報がある[5].VP7の詳細は不明であるが,最新の映像圧縮技術の一つであるMPEG4/AVC(H.264) と同程度の映像圧縮性能を有すると考えられる.標準ビデオのデジタル映像(640画素×480画素)をMPEG4/AVCで圧縮した時, データ転送速度と映像品質との関係は,概ね表2のようになる.したがってWiMAX映像中継において,1.0Mbps程度に高速であることが望ましく, 少なくとも,500kbps程度は確保する必要がある.なお,Skypeビデオは映像のリアルタイム性を確保するために, なんらかの方法で動的に映像圧縮パラメータを変更し,実データ転送速度を制御している.

表2. 標準ビデオ映像をMPEG4/AVCで圧縮した場合のデータ転送速度と映像品質の関係

データ転送速度 100kbps以下 500kbps前後 1.0Mbps前後
映像品質 映像がモザイク状になり,コマ送りが顕著である. 動きが少ない映像の品質は良いが,動きが大きい映像ではモザイクやコマ送りが発生する. 動きが大きい映像でも,ほぼ自然に再現できる.

アップリンク速度はWiMAX端末と基地局間の最高データ転送速度である.一方Skypeビデオはカメラ映像を パソコンに取り込み,取り込んだ映像を圧縮し,圧縮されたデータをWiMAX端末と基地局間で転送する. さらに,基地局からデータはインターネット内を流れ,最後に受信用パソコンで映像がデコードされ, ディスプレイに表示される.これだけの処理に要する速度がSkypeビデオの実データ転送速度になる. 実データ転送速度の上限はアップリンク速度であるが,実際には,送信側パソコンと受信側パソコンの性能に大きく依存する. 最終的に構築したシステムによる中継拠点ごとの実データ転送速度は,アップリンク速度の1/4程度になっていたようであり, 電波状態の良い場所での実データ通信速度は500kbps~1.0Mbpsであった.なお,実データ転送速度の計測にはフリーソフトである 「TCP Monitor Plus」[6]を用いた.

4.2 映像送受信システムの機器構成
開発した映像中継システムは撮影・送信システムと受信・表示・配信システムで構成される. それらを構成する機器と機器選定における注意点を記述する.

撮影・送信システムは,図2に示すように,ビデオカメラ,ビデオキャプチャー,送信用パソコン, WiMAX端末,三脚,ポータブル電源で構成される.各機器の具体的な製品名,機器選定における注意点などを表3に記述する.

図2.撮影・送信システム

表3.撮影・送信システムの機器構成と選定における注意点

機器 使用した製品 選定における注意点など
ビデオカメラ Panasonic HDC-TM70
Sony HDR-HC3
Sony HDR-HC1など
民生用および業務用ハイビジョンビデオカメラ
・ピンジャックのビデオ出力端子をビデオキャプチャーに接続する.
・ボート中継にはズーム倍率が大きな機種が必要.
・映像をメディアに記録するならば予備バッテリーも必要.
・頻繁なズームやパンニング等,大きなカメラワークは画質劣化を招くため,撮影には熟練が必要である.
ビデオキャプチャー プリンストン PCA-DAV2 ・この製品はVTRテープをデジタル化するための装置で,撮影・送信システムへの利用は目的外使用である.
・類似品のなかでこの製品が最も安定して動作した.
送信用PC HP Probook 4510s
Panasonic Let's Note S9
などのノートPC
・バッテリーとCPU,画像処理能力で良い性能が必要.左記PCのCPUはCeleron Dual Core 1.6GHz, Core i5 2.4GHz.
・CPU性能が劣ると,映像品質が大きく劣化する場合がある.
WiMAX端末 UD01NA, UD01SS ・端末と基地局の間に人体を挟まないなど,電波状態を良好に保つことが重要.
三脚 ・手ぶれは映像品質に悪影響を与えるため,一般には三脚が必要.
ポータブル電源 メルテック SG-1000, IP-150 ・PCとビデオカメラのバッテリーが切れる事態に備えて,車載用ポータブル電源を準備した.

受信・表示・配信システムは,図3に示すように,HUB,受信用パソコン,映像信号切換器, 映像信号分配器,大型ディスプレイ,映像信号のダウンコンバーター,インターネット配信用パソコンで構成される. 各機器の製品名,機器選定における注意点などを表4に記述する.

図3. 受信・表示・配信システム

表4. 受信・表示・配信システムの機器構成と選定における注意点

機器 使用した製品 選定における注意点など
HUB Buffalo LSW4-GT-8NP
受信PC MacBook Air, MacBook ・左記PCのCPUはCore 2 Duo.
・MacBookの外部映像出力端子をVGAに変換するアダプターを使用.
切換器 サンワサプライ
SW-CP21V
・機械式VGA信号切換器を使用.
・電気式の切換器は外部電源が必要な場合がある.
分配器 KOWA KD-106 ・VGA信号の六分配器.
・長いVGAケーブルを使用する場合,安価な分配器では信号が劣化するため不適である.ケーブル補償付の業務用機種が必要である.
大型ディスプレイ シャープ46インチテレビなど ・民生用テレビはPC接続が可能な機種であっても,大きな画像サイズ(高い周波数)には対応が難しい.
ダウンコンバーター Buffalo SC-1 ・ディスプレイに表示される映像信号をPCに取り込むため,VGAからビデオ信号へのダウンコンバーターを使用.
配信用PC Lenovo ThinkPad X200 ・左記PCのCPUはCore 2 Duo.

4.3 撮影・送信システムの運用
映像送信用パソコンにはUSB接続のWiMAX端末とビデオキャプチャーが接続されている. 送信用パソコンの電源投入後,一定の手順に従ってWiMAX端末をパソコンに接続し,次いで, 端末を基地局に接続設定する必要がある.また,ビデオキャプチャーも一定の手順でSkypeビデオに接続する必要がある. システム運用終了時には,正しい手順でUSBデバイスを切り離した後,パソコンの電源をオフにする必要がある. これらの手順を誤ると,認識されなかったり,パソコンがフリーズすることがあった.また, ビデオカメラとパソコンのバッテリー持続時間に注意が必要である.送信には通常以上の電力を使用しているようである. 実際,撮影・送信システムは連続して2時間程度撮影可能であったが,レースは15分から30分間隔で断続的に実施され, 全中継時間は2時間を超えるため,撮影が不必要な時間は,できる限り中継システムの電源を落とした.

各撮影地点にはビデオカメラマン1名,パソコンオペレータ1名,トランシーバーを用いた連絡員1名, 雨天など緊急時の対応要員1名の計4名を配置した.本部と撮影地点の連絡は主にトランシーバーを用い, Skypeビデオで通信中はその音声通話を併用した.さらに,緊急時のために個人の携帯電話を準備した.

Skypeビデオによる映像通信については,伴走艇と本部受信用パソコン一台を常時接続とし, もう一台の受信用パソコンでは5カ所の固定撮影地点の映像を順次切替えた.伴走艇からの映像は, スタート地点から約1,500mの石山港入口あたりまでは比較的良好な品質であったが,約1,500mから約2,500mまでは不安定, 約2,500mからゴールの3,200mまでは品質を持ち直す,という状態であった.全体的には,前半の映像品質が良く, 後半は大型ディスプレイに表示するには適さなかった.5カ所の固定撮影地点からの映像はいずれも良好であったので, 伴走艇からの映像が不安定な後半は,固定撮影点からの映像をディスプレイに表示した.

固定撮影点からの映像はレースの進捗に応じて順次切り替える.切換操作を送信用パソコン側から行うことも, 本部受信用パソコン側から行うことも可能であるが,送信用パソコンから制御することで, より短時間に切換を完了することができる.また,受信用パソコンからの接続要求に対してビデオ通話にならない事態が しばしば発生したことも,送信用パソコンからの制御を選択した理由である.

4.4 インターネットライブ配信
図3に示すように,大型ディスプレイに表示される映像信号と同じVGA信号を分配器で分配し, ダウンコンバーターでビデオ信号に変換し,ビデオキャプチャーを介してインターネット配信用パソコンに入力した. この映像を配信ソフトウェアUstreamを用いてインターネットにライブ配信した.また,レース映像中継以外の時間帯には, 本部の艇庫屋上に設置したビデオカメラの映像をライブ配信した.この切換は,ビデオキャプチャーへの配線を 手作業でつなぎ換えた.実況中継中の最大視聴者は200名以上,最終的な合計視聴者は900名以上であった.

4.5 雨天など屋外中継への対応
ボート競技は雨天でも実施されることを考慮して,以下の対策を準備した. ノートパソコンを市販の透明ポリプロピレン製の整理ボックスに入れ,さらに透明ビニールシートで 開口部を塞ぐことによって雨対策を施した.大型ディスプレイは艇庫屋上で,庇によって雨が避けられる場所に設置した. このような対策をとっても,大雨の場合にはカメラやパソコンに水が入り,映像中継は困難である. 最終的な判断として,艇庫上のディスプレイに直接雨がかかる程度の雨天の場合には,映像中継を中止することとした.

逆に快晴の場合には送信用パソコンのモニタ画面や観覧席の大型ディスプレイが見にくくなることが予想された. 送信用パソコンに対しては,雨対策として準備するプラスチックボックスに黒紙を貼付けることで視認性の改善を試みた. 大型ディスプレイについては特段の対策はしなかったが,幸い当日が曇天であったため,良好な映像描写環境であった

5. 実施状況
図4に映像中継の実施状況を示す.図4(a)は艇庫上に設置した受信・表示・配信システムの様子である. (b)は1台の大型ディスプレイを観戦する来場者の様子である.1台のディスプレイで50人程度が観戦し, 全体では200名程度が中継映像を観戦していた.(c)は伴走艇の写真である.運転手,ビデオカメラマン, 送信用パソコンのオペレータ,デジタルカメラのカメラマンの4名が乗り込んでいる. (d)は本部の艇庫屋上観覧席から見た男子エイトのレースである.右側へ進行し,京大艇が先行してそれを 東大艇が追う展開である.白い審判艇がすぐ後ろにつき,その上に小さく伴走艇が見える.

図4. 映像中継の実施状況

図5は伴走艇から撮影した映像中継の一画面である.(a)は艇庫屋上観覧席前を通過する京大エイト艇で, 図4(d)の写真の中の伴走艇からの撮影に相当する.(b)は女子クオドルプルレースで, 右側へ進行し,画面上部の京大艇が先行している.

図5. 伴走艇から撮影した映像画面例

肝心のレース結果はメインの男子エイト,女子クオドルプル,医学部フォアで京大が勝利した. 男子フォアは残念ながら12分08.43秒で東大の勝利となったが,何と0.38秒差,3,200mのレースで1m差という 大接戦のレースで,実況映像を見ている観衆は最後まで勝敗のわからない熱戦の画面に釘付けとなり, 漕手の力漕に声援を送った.正に実況映像放送のありがたみと醍醐味を感じさせる試合だった.大会後, 京大の勝利と善戦,そして映像中継を賞賛する声があふれた.

6. まとめと今後の課題
このように構築し,運用したWiMAX映像中継システムにより,成功裏に中継を終えることができた. 今後の課題として以下のような点を考えている.

(1) WiMAXのアップリンク速度に対してSkypeビデオが使用する実データ転送速度は1/4程度であった. 帯域をより有効に活用することで映像品質を向上することが望まれる.
(2) パソコンベースのシステムであるため,中継システムの立ち上げなどにデリケートな操作を必要とする. 民生品レベルで簡単な操作で使える中継システムが望まれる.また,中継システムの操作を学習することに 時間をとられ,ボート競技の撮影に十分習熟することができなかったことも課題である.
(3) Ustream配信用に音声マイクを接続したつもりであったが,インターネットに音声が流れていなかった ようである.レースの解説と雰囲気を伝える音声は必要である.
(4) SkypeビデオとUstreamの組み合わせでシステムを構築したため,複雑な構成になった.将来的には Ustreamのようなライブ配信サービスだけですべてが実現できるようになると予測されるが,システムの 運用をより簡単化することが望まれる.
(5) 伴走艇からの映像は,どうしても手ぶれや伴走艇自身のぶれが映像に反映され,映像品質に影響する. また,伴走艇の位置取りも重要である.伴走艇から見応えのある映像を撮影することは難度が高い技術を 必要とするが,ボート競技の映像中継にはそれに習熟することも課題である.
(6) 伴走艇からの中継においてコース半ばで受信基地局が隣接基地局へ引き継がれている(ハンドオーバー) .その際,見かけ上の接続は維持されているが,映像がフリーズするなどの影響が発生した.

市販の民生用機器と既存のソフトウェアを使用することにより,個人レベルで映像実況中継ができるように なり,種々の応用が可能になると考えられる.本稿がそのようなテレビ中継実施の参考になれば幸いである.

謝辞
本計画を実施するにあたり,京大ボート部マネージャ,OB有志,関係研究室の院生・学生, 京都大学学術情報メディアセンターの岡部寿男教授,美濃導彦教授,OB会である濃青会, UQコミュニケーションズ株式会社,シャープ株式会社,株式会社イトーキなどから,技術支援,機材提供, 労力提供等の協力を受けました.ここに厚く御礼申し上げます.

謝辞
[1] 京都新聞2010年6月12日(土)朝刊23面,朝日新聞京都版2010年6月19日(土)朝刊33面, 朝日新聞滋賀版2010年6月19日(土)朝刊33面
[2] 京大ホームページ
[3] 京大オープンコースウェアOCW
[4] 京大ボート部ホームページ
[5] On2テクノロジー社のVP7技術
[6] データ転送速度計測用 フリーソフト「TCP Monitor Plus」

上へ戻る

「人事・給与の申請閲覧等」のICカード対応について

情報環境機構
情報環境部 電子事務局推進室

8月10日火曜日から「人事・給与の申請閲覧等」へのログインをICカードによる認証方式に移行しました. 「人事・給与の申請閲覧等」は,各個人の諸手当に関する届け出や給与明細,評価情報などの管理・運用がされています. それらは京都大学教職員グループウェアに掲載される内容とは異なり,大切な個人情報であるため,従来から 「人事・給与の申請閲覧等」のシステムへのログインは,再度IDとパスワードを求める再認証方式としておりました. ICカード認証の導入によって,IDとパスワードのみの認証に比して,より安全・確実な個人認証が行えるようになりました.

昨年度,IC職員証・認証ICカード等の配付作業を統合認証センターと各関係部署が中心となり行ってまいりました. 当初,当該システムへのICカード認証方式によるログインは5月中の本格運用を想定しておりましたが, IC職員証・認証ICカード等の配付状況をも勘案して,今回の実施となりました.この間「人事・給与の申請閲覧等 (ICカードテスト)」を立ち上げ,ICカードによる認証をスムーズに行うため,練習用のサイトを用意して運用していました.

ICカードによる認証方法については,以下のところでご参照いただけます. グループウェアの「全学情報」タブのリンクインデックス「文書共有」 情報環境部 > グループウェア関係 > 参考書類 > ICカード認証操作説明

※ICカード認証の本格運用に関しては,認証ICカード所持者を対象にした 在職証明書発行システムを6月14日から稼働しています. 注)認証ICカード対象者は,有期雇用教職員,時間雇用教職員です

学術認証フェデレーション「学認」によるシングルサインオンサービスの紹介

情報環境機構 認証システム運用委員会

多数のWebサービスを利用するとき,個別にログイン操作をしなくても,一度のログイン操作で全てのサービスを 利用できるようにする「シングルサイオンオン(SSO)」と呼ばれる技術が普及しはじめています. 一つの組織内のWebサービスだけでなく,国内外の様々な組織のWebサービスとの連携を実現するため, 国立情報学研究所(NII)と全国の大学等が連携して学術認証フェデレーションを立ち上げています. この度この連携に「学認(GakuNin)」という愛称が付けられました.

京都大学は「学認」の本格運用フェデレーションに参加しており,ECS-ID(教育用コンピュータシステムの 利用コード)やSPS-ID(教職員グループウェア用ID)を用いて,複数の組織が提供するWebサービスを シングルサインオンで利用できるようになっています.

2010年8月現在,利用できるのは下記のサービスです.今後,対応サービスを更に充実させていく予定です.
・CiNii(日本の学術論文データベース) [NII]
・FaMCUs(MCU for Video Conferencing) [NII]
・Eduroam-Shib(Temporary eduroam account issuing) [NII]
・ RefWorks(ウェブ文献管理ツール) [ProQuest]
・DreamSpark (学生のみ) [Microsoft]

学認ではSSOを実現するために,米国Internet2が開発したShibbolethというソフトウェアを利用しています. Shibboleth 認証では,各Webサービスが必要とする属性だけを提供して認可を行うことができます. 例えば,個人を特定できるログインID等の情報を伏せたまま,本学の構成員であることや, 身分が学生であることなどの情報だけを各Webサービスに提供することができます. 必要以上に個人情報を提供しないため,安心してWebサービスを利用することができます.

全学メールと全学教職員グループウェア(Notes/Domino)

情報環境部 全学メールタスクフォース

京都大学において,従前は全教職員が同一のメールサービスを利用する環境がありませんでしたが, KUINSニュース No.69でお知らせしていますように,全教職員への同報メールの確立や安全かつ 利便性の高いメール環境として全学メール(KUMail)を構築し,運用を開始しています.

まず第1段階として,本年4月1日から,全学教職員グループウェア(Notes/Domino)のメール機能を 有していない教職員を対象にKUMailの運用を開始しました.Notes/Dominoにログインし「全学メール」 タブをクリックすることで,すぐに利用可能となっています.(メールソフトに設定しての利用も可能です.) 以前は,Notes/Dominoのメール機能を有していない職員は,Notes/Dominoのユーザー情報に各自で通常利用 されているメールアドレスを登録していただきNotes/Dominoの各種機能との連携を行っていただく必要が ありましたが,現状ではKUMailのアドレスがNotes/Dominoのユーザー情報として自動的に登録されます. これにより,Notes/Dominoの機能を利用して,重要な情報やお知らせ等を全教職員に一斉送信する 同報メールの配信が可能となり,メールと連携しているNotes/Dominoの様々な機能も有効に活用していただける 環境となりました.このメール一斉送信機能を利用して,7月7日に総長から重要なお知らせ「平成23年度概算要求基準 (シーリング)について」が全教職員へのメールとして配信されております.教職員の皆様は必ず, KUMailに送信される内容を確認できるようにしておいてください.(Notes/DominoからKUMailへ入る, メールソフトに設定して見る,或いはKUMailから通常使用されているメールアドレスへの転送設定を 行うなどの方法で確認できます.)

8月12日からは,Notes/Dominoのメール機能を有している職員(事務系)に対してもKUMailが利用できる環境を 公開しています.これによって,全教職員が同一のメールサービスを利用することが可能となりました. KUMailの運用開始にあたっては,Notes/DominoとKUMailが連携するための機能改修を行いました. これにより,KUMail側でメール作成時に「ノーツの宛先選択へ」のボタンを押下し, 直接Notes/Dominoの公開アドレス帳や2次アドレス帳を参照し,送信することが可能となっています. 特にNotes/Dominoのメール機能を有している職員(事務系)は,今までと同様の操作性で宛先を選択し メールを送信することができます.当面,Notes/Dominoのメール機能を有している職員(事務系)には, 別ウィンドウでKUMailを開く仕様とさせていただきます.

Notes/Dominoのメール機能には,スケジュールを共有できるカレンダー機能などがあり, これらと同等の機能を,別途Notes/Dominoの全ユーザーが利用できるWebスケジュールとして開発・ 公開する予定であり,この機能が実装できた段階で,KUMailを主として利用するようにNotes/Dominoのタブを 「メール」から「全学メール」に切り替える予定です.それと同時に,Notes/Dominoのメール機能はリンクから 利用できるように再配置し,並行利用可能といたしますが,Notes/Dominoのメール機能は,平成23年3月末で 運用を終了させていただきます.

全学メールに関するお問い合わせやご意見は,全学メールサポート (E-mail:kumail-qa@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)まで,ご連絡いただきますようよろしくお願いいたします.

<参考>
●平成22年3月30日「教職員用全学メールの運用開始について」の掲示内容
以下のところから参照できます.(京都大学教職員グループウェア(Notes/Domino))全学情報タブ > 文書共有から 情報環境部 > 10 グループウェア関係 > 01 お知らせ > 教職員用全学メールの運用開始について

●全学掲示板 平成22年7月30日掲示
Notes/Dominoのメール機能を有している職員(事務系)の全学メール運用開始について

電子ジャーナル及び公開されているコンテンツの適正な利用について

最高情報セキュリティ責任者
(情報担当理事)

本学では,学内の構成員に,出版社と契約して電子ジャーナル,電子ブック, データベースを提供しています.これらの利用にあたっては,おおむね以下の事項は禁止されています.
・個人利用の範囲を超えた大量のダウンロード 特にプログラム等を利用した自動操作による一括した大量ダウンロード
・個人利用以外の利用
・複製や再配布

また,学内ネットワークを通じて数々の無料コンテンツへのアクセス手段を提供していますが, それらの中には上記と同様の利用条件を課しているものがあります.これらの使用許諾条件に違反した場合, 本学全体の利用制限等のペナルティが科せられることもあります.利用者の方々は,上記のことについて 十分理解の上,適正なご利用をお願いします.

このたび,米国国立衛生研究所(NIH)が無料で提供している医学関係のデータベースNCBI PubMedについて, 本学からのアクセスが遮断されるという状況が発生しました.これについては,同データベースの管理者より, 本学の情報システムから同データベースに対して通常予測できる範囲を越える多数のアクセスが検出されたため, 不正利用とみなしてアクセスを遮断した旨の連絡が,平成22年5月29日(日本時間)にありました.そこで, 本学にて原因の調査を行った上で,今後の不適切な利用の防止策の検討等を含めた利用停止解除の要請を 同データベースの管理者に行ったところ,6月1日に遮断の解除が行われました.なお,同データベースは, 平成18年にも不適切な利用が原因でアクセス制限を受けていたことがあり,今後同様のアクセスの制限が 行われた場合に解除していただけるという保証はありません.

今後とも,電子ジャーナル,データベース等のコンテンツの利用については,著作権に配慮し, 提供者が課している条件の下で利用していただきますようお願いします.

【関連情報】
図書館機構のお知らせのページ
KUINSニュース No.53
医学図書館のお知らせのページ

上へ戻る

家庭での個人利用に関するフリーのウイルス対策ソフトの紹介

情報セキュリティ対策室

コンピュータウイルスの感染を防ぐため,学内で使用する大学所有の業務用及び教育研究用パソコンは, 市販のウイルス対策ソフトをインストールし,ライセンス更新されていると思います. しかし自宅で利用されている個人のパソコンのウイルス対策ソフトのライセンスが切れたままで利用されていないでしょうか.

パソコンを使うには,ウイルス対策ソフトは必須です.コンピュータウイルスは次々に新種が現れるので, ウイルス対策ソフトのウイルス定義ファイルを最新にする必要があります.ライセンスが切れた状態では ウイルス定義ファイルを最新にする事ができません.また,ライセンス契約をしていてもウイルス定義 ファイルの更新は必須です.

定義ファイルの更新を忘れずに行うためには,自動更新の設定を有効にして, ウイルス定義ファイルを常に最新のものにしてください.PCを起動した直後には必ずウイルス定義ファイルを 更新してから作業に入る習慣をつけることを強く推奨します.

コンピュータウイルス感染を防ぐためには,市販のウイルス対策ソフトを使うことを推奨します. しかし,市販のウイルス対策ソフトをインストールできない場合は,家庭での個人使用に限って マイクロソフトから無料で配布されているウイルス対策ソフトのMicrosoft Security Essentialsが利用できます. (大学所有の業務用及び教育研究用パソコンでの使用はできません.ご注意ください.)

Microsoft Security Essentialsはウイルス,スパイウェア,マルウェア(悪意あるプログラム) からパソコンをリアルタイムで保護します.ただし,市販のセキュリティ対策ソフトにある ファイアウォール機能や迷惑メール対策機能,URLフィルタリング機能,フィッシング詐欺対策機能などはありません.

なお,個人所有のパソコンであっても大学で研究用に使用しているものについては「Home user」 とみなすことがライセンス上できず,Microsoft Security Essentialsなどのフリーの セキュリティソフトの使用はできません.必ずライセンス上の利用条件を確認した上でお使いください.

Microsoft Security Essentialsの詳細は次のURLをご参照ください.
【Microsoft Security Essentials】
・2010年6月現在の対応OSは,次のとおりです.
正規品 Windows XP (Service Pack 2 または Service Pack 3),Windows Vista (Gold,Service Pack 1,または Service Pack 2),Windows 7

・関連情報
【コンピュータ周辺機器の比較:セキュリティソフトの比較】
【総務省・経済産業省連携:ボット対策プロジェクト】
【IPA:主なワクチンベンダーのWebサイト等一覧】
【無料アンチウイルス(ウイルス対策ソフトウェア)】

無線LAN基地局に関するお知らせ

KUINSニュースNo.69以降に新たに追加されました無線LAN基地局についてお知らせします.

今回は女子寮(図書室,守衛室),宇治地区研究所本館(宇治地区図書館), iPS細胞研究所(1階講堂,ギャラリー,会議室,オープンラボ3階~5階,セミナールーム2及び3, 4階及び5階リフレッシュスペース),医学部A棟(103号室),理学研究科セミナーハウス(ホール,小セミナー室) ,理学部2号館(第1~第3講義室,ロビー),理学部4号館(第1~第3セミナー室,ロビー), 理学部5号館(113, 115, 401, 501, 511, 525号室)に設置しました.

今回は,別記事にある通り,一部箇所にてライブドア提供の無線LANが利用できるようになりました. さらに,今回の記事には間に合いませんでしたが,中央食堂,カンフォーラ, 吉田食堂等への新規設置,室町寮,熊野寮の基地局リプレイスによるeduroamの提供を計画中です. また,情報学研究科においては,研究科設置の既設基地局をみあこネットおよびeduroam対応へと 切り替えて行きます.なお,KUINS提供の無線LANは,11aおよび11gの両規格で, みあこネットおよびeduroamの両方を利用できます.しかし,情報学研究科既設の無線LAN基地局は 機種が異なりますので,11gでみあこネットのみ,11aでeduroamのみ,利用可能となります.ご了承下さい.

別記事として,原子炉実験所とiPS細胞研究所より寄稿いただきましたので,そちらの方も合わせて御覧下さい.

今まで紹介しております一連の作業は,全学インセンティブ経費 アクセスネットワークによる設置の一環として 実施中です.講義室や会議室や共同利用者控室等,公共性の高い空間への設置作業を進めております. 御希望のある部局担当者様からの御相談・御質問等お待ちしております.お問い合わせは q-a@kuins.kyoto-u.ac.jpまでお願いいたします.(件名に【無線LAN基地局設置】と御記入いただけますと幸いです.)

今までKUINS側で設置しました場所以外に部局独自で追加設置される場合, 部局で購入された無線LAN基地局がKUINS仕様であり,部局としての要望がありましたら, 当該基地局をKUINS管理に移管することが可能です.なお,現在KUINSで導入している無線LAN基地局は, アライドテレシス製のAT-TQ2403です.部局での設置を御検討されている場合は, 上記同様,導入前にq-a@kuins.kyoto-u.ac.jpまで御連絡下さい.

熊取 原子炉実験所の無線LANアクセスポイントについて

原子炉実験所 メディア管理室
平井 康博

原子炉実験所では,2010年1月にKUINS仕様による複数の無線LANアクセスポイントが設置されました. 本記事では,原子炉実験所における無線LANの利用についてご紹介します.原子炉実験所は, 「原子炉による実験及びこれに関連する研究」を行うことを目的とした共同利用研究所です. しばらく,原子炉は運転を停止しておりましたが,6月から運転再開する事になっております. この為,学内外の共同利用者にも気軽に利用可能で,かつ安全なネットワーク環境が必要とされていたのですが, この度情報環境部の協力で,KUINS仕様による無線LAN基地局を設置する事が出来ました.

KUINS仕様の無線LANアクセスポイントは,みあこネット方式と,eduroamの両方に対応しております.

みあこネット方式の場合,ECS-ID,またはSPS-IDを用いて認証を行い,PPTPやSSH等によって 通信経路の暗号化を行う事で安全性を確保しています(無線LANで多用されるWEPやWPAは用いません). この為,事前にPPTPの設定が必要になるのですが,学内から共同利用等で来られる場合などで, この設定を済ませたノートPCをお持ちいただける場合,そのままお使い頂く事が出来ます. また,当実験所のメールアカウントをお持ちの場合,SMTP認証や,SSLによる暗号化を行う事で, PPTP接続を行わなくともメールの読み書きは可能になり,設定の手間が省けます.

先ほど申し上げた通り,eduroamにも対応しておりますので,所属組織でeduroam アカウントをお持ちの場合は,そのままご利用頂く事が出来ます.

なお,既に設定済みのノートPCを貸し出す用意もございます(貸し出しは所員の名義で行います).

無線LANアクセスポイントの設置場所は以下の通りとなります.
・事務棟大会議室
・図書棟大会議室
・図書棟図書室
・CA棟会議室
・研究棟1F会議室

当実験所の共同利用施設としての性質を鑑みて,現状では会議室中心に設置されておりますが, 今後も設置場所を増やしていく予定になっております.

iPS細胞研究所新棟の無線LAN接続環境の提供について

iPS細胞研究所 事務部
情報環境室

iPS細胞研究所では,2010年5月,新研究棟にKUINS提供の無線LANアクセスポイントを設置しました.

新研究棟は,2010年2月,京都大学吉田キャンパス病院西地区に完成しました. 地上5階,地下1階,延床面積約1万2千平方メートルの研究施設で, 日本のiPS細胞研究の中核として機能することが期待されています.

新棟の特徴として,オープンラボを採用し,研究者間の交流を積極的に促進しております. その環境作りとして,簡便に利用できる無線LANサービスの提供は不可欠であり, 情報環境部ネットワークグループのご協力によって,利便性も安全性も高いMIAKOネット方式の 無線LANの導入を実現することが出来ました.

新棟の無線LANアクセスポイント設置エリアは,下記の通りです.
・オープンラボ(3,4,5階)
・セミナールーム(3階)
・会議室(1階)
・リフレッシュスペース(4,5階)
・講堂(1階)
・ギャラリー(1階)

無線LANの導入にご協力頂きました情報環境部ネットワークグループの皆様に,心よりお礼申し上げます.

平成22年度の新サービスについて

KUINSでは,平成22年度新規サービス事業として以下のサービスを展開しようと考えています. ここでは,それぞれのサービスについて簡単にご紹介します.

●PPTP・VLAN固定接続サービス
現在,KUINSで提供しているPPTP接続サービスは,認証に成功するとPPTP専用のVLANへ接続され, そこからインターネット及び学内限定ネットワークへアクセスすることが可能となります. ただし,研究室など特定のVLAN内のリソース(ファイルサーバやプリンタ)にはアクセス出来ませんでした. 今回新たに提供するサービスでは,PPTP接続に認証を加えることで,ユーザが普段学内で利用している 研究室VLANへ直接接続出来るようにするものです.このサービスを使うことにより, 情報コンセントからの直接アクセスに準じた接続環境となり,VLAN内に設置しているファイルサーバや プリンタが利用出来るようになります.詳細については,本号別記事をご覧ください. 10月1日より全構内でサービス提供開始を予定しています.

●アクセスネットワークにおけるWeb認証サービス・MACアドレス認証サービス
現在,講義室などの公共スペースでは,原則としてKUINS-IIIのオープンスペースVLANが利用できます. オープンスペースVLANでは,一旦認証をしてPPTPやSSHポートフォワードサーバに接続し, その後例えば学外へとアクセスすることになります.しかし,講義等で利用するには, この方式は不便です.これを踏まえ,利用者が情報コンセントに接続すると特定のWEB画面に誘導され, そこでパスワード認証を受ける「Web認証」および,利用者の端末のMACアドレスをあらかじめ登録しておき, 登録されたMACアドレスは接続を許可する「MACアドレス認証」を提供するサービスを提供します. これにより,前述した手間が解消できます.11月1日より全構内でサービス提供開始を予定しています.

●SSL-VPN接続サービス
KUINSでは,自宅などの学外から学内へ接続するためのサービスとして,PPTP接続サービスやSSH ポートフォワード接続サービスを提供しています.これらを使うことにより,学内からネットワークを 利用しているのと同等の環境を作ることができるようになっています.例えば電子ジャーナルなど 学内限定のサービスの利用です.これと同様のサービスを,SSL-VPNという方式で実現するサービスです. SSL-VPNとは,SSL(Secure Sockets Layer)技術を使用したセキュアなリモートアクセスを実現するサービスです. PPTPと異なり,ファイアウォールなどでアクセスが制限された環境においても利用できます. 11月1日より全構内でサービス提供開始を予定しています.

PPTPによるVLAN固定接続サービスの案内

KUINSが提供している「PPTP接続サービス」について,新たな利用方式のサービスを 2010年10月1日より開始しますので,お知らせいたします.現在提供しているPPTP接続サービスは, (1) 学外からのKUINSへのアクセス,(2) 学内のMIAKOネット(無線LAN)アクセスポイント経由の ネットワーク接続,等に利用していただいておりますが,各研究室及び部局等のVLANへ直接 アクセスすることは出来ませんでした.

今回新たに提供する「PPTP・VLAN固定接続サービス」は,PPTPサーバに VLAN番号とUserIDの組み合わせによる認証を加えることで,ユーザが普段学内で利用している VLANへ直接アクセス出来るようにするものです.これまでのPPTP接続では出来なかった KUINS-III VLANへのリモート接続が,新たな機器設置や接続料などの負担なく利用できます. この方式で接続することによって,学内・学外の利用場所を問わず(注1),学内のVLANに属する 情報コンセントへ接続しているのに準じた接続環境となり(注2),VLAN内に設置しているサーバ, プリンタ等の機器にそのままアクセス出来るようになります.

(注1) PPTPサーバにアクセス出来る環境であることが前提です.
(注2) ただし,IPアドレスについては,指定したVLANのアドレスが直接割り当てられる わけではなく,別のKUINS-IIIアドレスが割り当てられた上で,PPTPサーバからVLANに アクセスする際にNATで変換されます.従って,端末側で見えるIPアドレスとVLANでの通信に 利用するIPアドレスは異なります.

●想定される利用方法(VLAN外から)
・Windows,Mac OSのファイル共有(別の場所から2つの端末が同じVLANに固定接続した場合も, それぞれ共有化が可能.)
・リモートデスクトップ接続
・プリンタの利用
・NAS(ネットワーク対応HDD)の利用
・KUINS-III VLAN下に設置されたファイルサーバ,IRCサーバなどへの接続等

●サービス提供範囲
北部構内,本部北構内,本部南構内,吉田南構内,医学部構内,病院構内, 薬学部・病院西構内,宇治地区,桂地区の構内に属するVLANへの接続が利用可能です.

●利用申請方法
固定接続するVLANの管理責任者より,下記の情報を明記したメールを q-a@kuins.kyoto-u.ac.jpに送信してください.このサービスは申請したVLANと利用者IDの 組み合わせでのみ利用可能です.VLANと利用者IDの登録が完了次第,管理責任者にメールで連絡します.
・VLANが属する構内
・VLAN番号(VID)
・VLAN管理責任者名
・利用者全員のSPS-IDもしくはECS-ID
・このサービスの利用に関する担当者名と連絡先

セキュリティ上,利用者の選定は慎重にお願いします.固定接続によってVLAN間通信を 設定しているVLANにもアクセスできるようになりますので注意が必要です. 利用者IDは年度末ごとにリセットする予定ですので,その場合継続申請を出していただく 必要があります.なお,この利用者登録は,将来的にはKUINS接続機器登録データベースから 行えるようにする予定です.

●設定方法
設定方法は通常のPTTP接続と同じですが,「サーバホスト名」と「ログインID」が異なります. 登録完了時に発送するメールにてそれぞれお知らせします.

●サービス開始時期
2010年9月中に一部構内でサービス開始予定
10月1日(金)より全構内でサービス開始予定

サービスの開始時はKUINS運用委員会ホームページで告知します. 利用を希望される方はあらかじめq-a@kuins.kyoto-u.ac.jp宛に申請のメールを 出しておいていただきますようお願いします.

ライブドア公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」の学内実証実験について

学術情報メディアセンター ネットワーク研究部門
高機能ネットワーク研究分野

学術情報メディアセンターネットワーク研究部門高機能ネットワーク分野(担当:岡部寿男教授)は, 株式会社ライブドアと共同で,7月7日より同社の公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」の 接続実証実験を実施しています.

本実証実験により,京都大学キャンパス内に設置される無線基地局の一部から, 従前の「MIAKO」(みあこネット方式)ならびに「eduroam」(eduroam方式)に加え, 新たに無線LANシグナル(SSID)「livedoor-web(ライブドアウェブ)」が放出されています. 「livedoor-web」は「livedoor Wireless」の会員,ならびに同社と提携するISP(※) のユーザーIDでの利用が可能です.WEPキーならびに接続方法については, ライブドアまたは提携ISPが会員限定で開示している情報をご参照ください.

本実験は,学外からの訪問者への開放ネットッワークとしての用途,および, 本学の学生・教職員・関係者などのキャンパス内においての無線LANの利用シーン, 利用デバイスの拡大による利便性向上を検証していくものです.

実験期間は,2010年7月7日から2011年2月28日までの予定です. 本ニュース発行時点における,学内での利用可能場所は,以下の通りです.

吉田キャンパス:
吉田南構内(吉田食堂,楽友会館)
本部構内(正門前,百周年時計台記念館,カンフォーラ,タリーズ)
北部構内(北部食堂,喫茶ほくと)
西部構内(カフェテリアルネ)
医学部構内(芝蘭会館)
病院西構内(稲盛財団記念館)

宇治キャンパス:
おうばくプラザ
宇治生協食堂

本実験に対するライブドアの発表記事については,こちらをご覧ください. また,「livedoor Wireless」の詳細については,こちらをご覧ください.

予約が成立すると,上記で指定した情報の他に次の予約情報が表示され, メールでも通知されます.

(※) 本ニュース発行時点でlivedoor Wireless と提携しているISPは以下の通りです.
・(株)トリプレットゲート
「ワイヤレスゲート」
・(株)ワイヤ・アンド・ワイヤレス 「Wi2(ワイツー)300」

本件に関するお問い合わせは以下へお願いします.
京都大学学術情報メディアセンター
ネットワーク研究部門高機能ネットワーク研究分野
ライブドア無線実証実験担当
e-mail: ld-wireless@net.ist.i.kyoto-u.ac.jp

「livedoor Wireless」の学内実証実験について

学術情報メディアセンター ネットワーク研究部門
高機能ネットワーク研究分野

KUINSニュース No.70でお伝えしておりました「livedoor Wireless」の学内実証実験について, 以下の場所に対応無線LAN基地局が追加されましたので,お知らせいたします.

吉田キャンパス:(本部構内) 中央食堂
桂キャンパス:船井記念講堂,事務管理棟,福利・保健管理棟,プロムナード下,ローム記念館

なお,対応基地局の最新情報は,こちらで御覧頂けます.

KUINS 会議日誌

平成22年5月31日~平成22年8月30日

情報環境機構 KUINS 運用委員会
平成22年6月14日(平成22年度 第3回)
・平成21年度決算報告と平成22年度予算(案)について
・インセンティブ経費要求について
・kyoto-uドメイン申請
・KUINSの新サービスと現状について
・SINET4アクセス回線共同調達に係る協定書の提出について
・KUINSニュースNo.69の発行
・PubMedアクセスの附属図書館認証プロキシへの組み入れについて
・ライブドアとの共同実験について
・無線LANアクセスポイントの状況報告
・KUINS状況報告
・kyoto-uドメイン申請
・その他

平成22年7月26日(平成22年度 第4回)
・平成22年度予算(案)の補正について
・インセンティブ経費要求について(追加修正)
・KUINSニュースについて
・KUINSの新サービスの進行現状について
・岐阜情報スーパーハイウェイの廃止に伴う遠隔地接続について
・歴史的PIアドレスへの課金について
・KUINS無線LANアクセスポイントの状況報告
・KUINS状況報告
・kyoto-uドメイン申請
・その他

お知らせ

KUINSニュースへの寄稿を歓迎します.詳細は kuins-news@kuins.kyoto-u.ac.jp または下記までお問い合わせください.

問い合わせ先
情報環境部 情報基盤課 ネットワークグループ(075-753-7841, 7432)

PDF版 KUINSニュース No.70

 

Copyright © Institute for Information Management and Communication, Kyoto University, all rights reserved.